ZEH(ゼッチ)というワードを最近よく耳にする方も多いと思います。2025年4月、すべての新築住宅に「省エネ基準適合」が義務化になることをご存じですか?省エネ住宅は、ランニングコストを抑え、健康で快適に過ごせるメリットがあります。今回は、このZEHとはどういうものかをわかりやすくお伝えしていきます。
1.ZEH(ゼッチ)とは
弊社のホームページにも掲載しておりますが、ZEH(ゼッチ)とは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称で、住まいのエネルギー消費を限りなくゼロに近づけることを目的とした住宅です。具体的には、
・高断熱性能 により冷暖房のエネルギー消費を削減
・高効率設備(省エネ設備)を導入
・再生可能エネルギー(太陽光発電など) によりエネルギーを自給自足
これらの要素を組み合わせることで、年間の一次エネルギー消費量(暖房、冷房、換気、給湯、照明など)を概ねゼロ以下にする住宅を指します。
2.2030年にはZEH水準の省エネ住宅が新築の標準に
政府は、脱炭素社会の実現を目指し、2025年4月から全ての新築で省エネ基準適合を義務化します。この基準は段階的に引き上げられ、2030年にはZEH水準の省エネ住宅が新築の標準になります。これにより、住宅業界は大きな転換期を迎え、エネルギー効率の高い住宅が一般化すると考えられます。
3.ZEHと住宅性能表示の関係
ZEHは、住宅の性能表示制度と密接に関係しています。日本の住宅性能表示制度では、住宅の断熱性能や省エネ性能を評価する基準として「断熱等性能等級」や「一次エネルギー消費量等級」があります。ZEHは、これらの基準の中でも高いレベルを要求されるため、断熱等性能等級5以上、一次エネルギー消費量等級6以上が求められます。つまり、ZEH住宅は、住宅性能表示制度においても最高水準の省エネ性能を備えた住宅であると言えます。
4.ZEHの基準を満たすポイント
ZEHの基準を満たすためには、以下の3つのポイントが重要になります。
①外皮性能の向上(断熱・気密性の向上)
外皮とは、建物の外壁、屋根、床、窓、天井など、室内と室外を隔てる境界部分のことを言います。外皮の断熱性能は、室内の快適性を保ち、省エネ化を推進する上で重要な要素です。
・高性能な断熱材やトリプルガラスの窓を採用し、熱損失を最小限に抑える。
・省エネ基準(UA値・ηAC(イータエーシー)値)をクリアすること。
②省エネ設備の導入
・高効率エアコン、エコキュート(高効率給湯機)、LED照明などを採用。
・換気システムも熱交換型換気扇を導入することで冷暖房の負荷を軽減。
③再生可能エネルギーの活用
・太陽光発電を導入し、年間の発電量が消費エネルギーを上回ることを目指す。
・余剰電力を活用するために蓄電池やV2H(電気自動車の活用)を導入する。
5.ZEHに求められる断熱材の種類
ZEHでは、高い断熱性能が求められるため、使用する断熱材の選定が重要です。代表的な断熱材には以下のような種類があります。
・発泡プラスチック系断熱材(ポリスチレンフォーム、ウレタンフォームなど)
断熱性能が高く、薄くても効果を発揮しやすい断熱材です。湿気を吸収しにくいため耐久性が高いことが特徴です。
・繊維系断熱材(グラスウール、ロックウール)
コストパフォーマンスが良く、リサイクル素材も利用可能断熱材です。防音性に優れているため、静かな住環境を実現できることが特徴です。
・自然素材系断熱材(セルロースファイバー、ウール断熱材)
環境に優しく、調湿性に優れている断熱材です。施工の際の安全性が高いことが特徴です。
6.ZEHの種類
ZEHにはいくつかの種類があり、それぞれ次の表のように特性が異なります。
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス) | 一般的なZEH基準を満たした住宅 |
ZEH+(ゼッチ・プラス) | ZEHに加え、更に高性能な省エネ設備や蓄電システムを導入した住宅 |
ZEH Oriented(ゼッチ・オリエンテッド) | 再生可能エネルギーの導入が難しい都市部向け。断熱性能と省エネ設備に特化した住宅 |
Nearly ZEH(ニアリー・ゼッチ) | ZEH基準にはわずかに満たないが、高い省エネ性能を持つ住宅 |
7.ZEH基準の住宅は良いことがいっぱい
ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)住宅は経済的、環境的、健康的な観点からみると魅力的な点がたくさんあります。
①エネルギーコストの削減
ZEH住宅は、断熱性能の向上と再生可能エネルギーの利用により、エネルギー消費量が少ないため、光熱費を大幅に削減できます。
②快適な住環境
高い断熱性能を持つZEH住宅は、室内の温度を一定に保つことができ、夏は涼しく、冬は暖かい快適な住環境を実現します。
③環境への配慮
再生可能エネルギーの利用により、CO2排出量を削減し、環境への負荷を軽減します。持続可能な住まいとしての価値が高まります。
④健康への貢献
断熱性能の向上と適切な換気システムにより、カビや結露を防ぎ、健康的な室内環境を保ちます。また夏は涼しく、冬は暖かく過ごすことができ、ヒートショックが起こりづらいと言われています。
⑤住宅価値の向上
エネルギー効率が高く、環境に配慮した住宅として評価されるため、将来的な住宅価値の向上が期待できます。
8.ZEHのデメリットは?
ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)住宅には多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットも存在します。
①初期費用が高い
ZEH住宅の建設や改修には高い初期費用がかかります。特に高性能なエネルギー効率の高い機器や材料を使用するため、コストが増加します。
②設計と施工が複雑
エネルギー効率の高い住宅を設計し、施工するには専門知識が必要です。これにより、設計や施工のプロセスが複雑になることがあります。
③メンテナンスコスト
高性能なエネルギー効率の高い機器はメンテナンスや修理が必要であり、これには追加のコストがかかります。
④発電量が安定しない
太陽光発電は毎日安定した発電量を供給できるわけではなく、天気によって左右されます。但し、雨の日だから全く発電しないということはありません。また、どの太陽光パネルを採用するかによっても性能が変わってくるので、一概には言えないところもあります。
⑤外観を損ねる
太陽光パネルを設置すると屋根のデザインが損なわれるため、建物の外観を気にする方にとってはマイナスポイントになるでしょう。
まとめ
ZEHは、これからの住宅のスタンダードとなる省エネ住宅です。断熱性能の向上、省エネ設備の導入、再生可能エネルギーの活用を組み合わせることで、年間のエネルギー消費量をゼロに近づけることが可能になります。材料代も電気代も高騰し続ける今、新築をお考えの方は決断をすべき時かもしれません。太陽光でエネルギーをつくり、断熱等級が高い住宅に住むことは、将来的にコストパフォーマンスは良いと言えるでしょう。また、持続可能な社会の実現のためにも、ZEHの普及が進むことが期待されています。宜しければ関連記事「GX志向型住宅とは?基本から補助金まで詳しく解説!」も併せてお読み頂ければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。