家づくりを進めていると、「サッシ」という言葉をよく耳にします。しかし、「窓ガラスとは違うの?」「どこがそんなに大事なの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。サッシとは、窓ガラスを支える“枠”の部分です。窓を開閉するための構造であり、外気・雨・風・音・熱などの侵入を防ぐ重要な役割を担っています。つまり、窓 = サッシ(枠)+ ガラスという構成になっています。見た目ではガラス部分に目が行きがちですが、実はサッシの性能が住宅の「断熱性」「防音性」「結露防止」に直結します。
1. なぜサッシは重要?
家の中で“熱が最も出入りしやすい”場所はどこかご存知でしょうか?それは、「窓」です。たとえ壁や屋根を断熱仕様にしても、サッシの性能が低ければ、そこから熱が逃げてしまい、夏は暑く・冬は寒い家になってしまいます。また、サッシが冷えることで結露が発生し、カビや木材の腐食につながることもあります。つまり、冷暖房の効率・結露の防止・光熱費の削減・住まいの寿命、これらすべてに、サッシの性能が関係しているのです。
2. 今主流のサッシ、素材と特徴
ここでは、現在日本で主流となっているサッシの種類を素材別にお伝えしていきます。
①アルミサッシ
もっとも一般的で、軽くて耐久性に優れています。しかし、熱を伝えやすいため断熱性は低め。冬は結露しやすいという弱点があります。
②アルミ+樹脂複合サッシ
外側をアルミ、内側を樹脂にしたハイブリッド型。断熱性能とデザイン性のバランスがよく、現在の新築住宅で最も採用率が高いタイプです。
③樹脂サッシ(フル樹脂)
枠全体が樹脂でできており、断熱性・気密性ともに最高クラス。寒冷地では標準仕様になっていますが、価格が高く、枠がやや太めになる点が課題です。
④木製サッシ
高級感と温かみがあり、デザイン性重視の住宅で人気があります。ただし、メンテナンスや耐久性に注意が必要で、コストも高めです。
3. 世界と日本のサッシ事情
日本では長らくアルミサッシが主流でしたが、世界的には樹脂や木製サッシが中心です。特にヨーロッパでは、断熱基準が非常に厳しく、アルミ単体サッシの採用率は5%未満ともいわれます。近年、日本でも住宅性能への意識が高まり、「樹脂サッシ+複層ガラス」が増えています。30年くらい前までは、二重サッシが当たり前でしたが、このようにサッシ事情も変化を遂げています。
5. サッシ選びのポイント
サッシを選ぶ際は、以下のポイントを押さえると失敗しにくくなります。
① 枠の素材
性能・価格・デザイン性・メンテナンス性が大きく変わります。断熱性を重視するなら樹脂系、コスパを重視するならアルミ複合系が現実的です。
② ガラスの種類
サッシとガラスの組み合わせで、性能はさらに変わります。
・複層ガラス(ペアガラス):断熱・遮音性能が高い
・トリプルガラス:寒冷地向け。より高断熱
・Low-Eガラス:特殊金属膜で熱・紫外線をカット
・アルゴンガス封入:中空層にガスを入れ断熱性アップ
③ 性能数値(U値)
「熱貫流率(U値)」は、サッシの断熱性能を数値で表したもの。数字が低いほど熱を通しにくく、高性能です。
④ 施工の精度
どんなに高性能なサッシを選んでも、施工が悪ければ性能は発揮できません。枠の取り付け精度、シーリング処理、排水設計などのチェックが重要です。
⑤ デザインとメンテナンス
サッシの枠幅や色は、外観・内観の印象を左右します。樹脂サッシは枠が太めなので、デザインのバランスも確認が必要です。木製サッシは定期的な塗装・防腐処理が必須です。
⑥ コストとバランス
性能が高いサッシほど価格も上がります。
ただし、断熱性の向上=光熱費の削減につながるため、長期的には経済的な選択になる場合もあります。
4. 地域・気候による選び方の違い
- 寒冷地(北海道・東北など) → 樹脂サッシ+トリプルガラスが基本。結露・冷気対策を最重視。
- 温暖地(関東・九州など)→ アルミ+樹脂複合サッシ+ペアガラスで十分な場合も。
- 多湿地域(日本海側・沿岸部)→ 結露対策・防錆性の高い樹脂枠や複合枠をおすすめします。
5. 新築時に確認しておきたいサッシ仕様
注文住宅では、工務店やハウスメーカーごとに“標準仕様”が異なります。打ち合わせの際は、次の点を確認してみましょう。
- サッシの素材(アルミ・樹脂・複合)
- ガラスの種類(複層・Low-E)
- 熱貫流率(U値)はどれくらいか
- 結露対策・気密性能の実績
- 施工・納まりのチェック体制はあるか
こうした質問をするだけで、業者の技術力や住宅性能への意識を測ることができるでしょう。
6. 将来を見据えたサッシ選び
サッシは一度取り付けると、簡単には交換できません。だからこそ、長く暮らす家では“今だけでなく10年後・20年後の快適さ”を考えて選ぶことが大切です。断熱性能の高いサッシを選ぶことで、冷暖房費の削減、室内の温度ムラの減少、結露・カビ防止、住宅寿命の延長など、多くのメリットが得られることでしょう。
まとめ
サッシは、家づくりにおける「縁の下の力持ち」です。見た目には地味でも、暮らしの快適さ・省エネ性・健康・耐久性に大きく関わります。これから家づくりをされる方は、ぜひ「窓=サッシ」にも注目してみてください。どんなサッシを選ぶかで、家の快適さと暮らしやすさが大きく変わります。理想の住まいを叶えるために、見た目だけではなく「サッシの性能」についても十分に話し合ってみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。宜しければ関連記事「内窓とは?今すぐ付けるべき理由と補助金の話【2025年版】」も併せてご覧いただけますと幸いです。