注文住宅の中でも「ピアノを置く位置」は慎重になると思います。特に「床の補強が必要かどうか」は、多くの人が悩むポイントでしょう。この記事では、ピアノの最適な置き場所や、重さ・床補強の必要性について分かりやすく解説します。
こちらがこの記事の目次となります。それでは順番にお伝えしていきましょう。
1. まずどこに置くか考えてみる
注文住宅の間取りづくりは、どこにどのようなものを置くかもイメージしながら進められることと思います。家具家電を置く場所と同じように、ピアノの配置をまずは考えてみることから始めましょう。
1-1. 置き場所を決定する
ピアノを置く場所を決める際は、「家全体の間取り」と「生活動線」を考慮しましょう。ピアノは大きく非常に重いため、一度置くと移動が難しいと言えます。また、ピアノの音量や響きと、家族の生活音とのバランスがとれるようにしましょう。リビングに置くなら家族が集まる空間を彩る素敵なインテリアになりますが、寝室や子ども部屋の近くに置く場合は練習時間帯の制限や騒音の配慮も大切です。
1-2. ピアノが入ればいいわけではない
ピアノが「部屋に収まればOK」と思っていませんか?設置後の周囲の空間にも余裕を持たせる必要があります。特にグランドピアノは、奥行で設置スペースを考えるだけでは足りません。なぜなら、定期的に調律をするために鍵盤を手前にスライドさせて作業するためです。また弾く人や曲によって前後に椅子も調整したり、連弾をすることもあるでしょう。数人の人が入れるスペースを確保すると尚良いと言えます。さらに、適切な湿度管理ができる場所であることも大切です。
2. ピアノの大きさと重さについて
ピアノの種類によって重さや設置スペースが異なるため、それぞれの特徴を簡単に理解しておきましょう。
2-1. グランドピアノ
グランドピアノは、高さは100cm前後、間口は約145~155cm、奥行きは約150~275cm、重さは約300〜600kgです。3脚のキャスターで床への荷重が大きいため、補強を考えたほうが良いでしょう。高級感と響きの良さが魅力ですが、音も大きくピアノ屋根による音量制限しかできないため、時間帯の制限や防音・防振対策が必要な場合もあります。
2-2. アップライトピアノ
アップライトピアノは、比較的小型で横幅が約約149~153cm、奥行きは約50~65cm、重さは約150〜300kgでキャスターは4個ついています。グランドピアノに比べて設置しやすいですが、それでも一定の箇所に荷重が集中するため、床の耐久性を確認しておくと安心です。アップライトピアノは真ん中のペダルにマフラーペダルがあり、かなり音量をセーブできます。トランスアコースティック™ピアノやサイレントピアノも中身は違えど同じような大きさと重さです。
2-3. 電子ピアノ
電子ピアノは軽量で、床補強が必要になることはほとんどありません。ただし、長時間の使用で音が振動として床に伝わる場合があるので、マットを敷くなど何らかの防音・防振対策を考えるとより快適です。
3. 建築基準法に準拠している建物であれば補強不要?
一般的な住宅は、建築基準法85条に基づき1平方メートルあたり180kgの荷重に耐えられる構造が基本です。
国土交通省HP添付資料4-2-6 建築:床荷重凡例
つまるところ、この数値は床が破壊されない指標としての解釈が近く、ある程度のたわみや下がりは許容範囲とされているのです。ですから今から注文住宅を建てる予定でピアノを入れるのが決まっているなら補強したほうが安心なのです。その理由についてお伝えしていきましょう。
3-1. 予めピアノ設置が決まっているなら構造計算から
予めピアノを設置することが決まっているなら、建築会社に設計前に伝えておきましょう。弊社は木造軸組工法(在来工法)で注文住宅づくりをしていますので、予め重量のあるものを家に置く場合は構造計算に加味します。もちろん、通常の仕様でも建築基準法に基づいて耐荷重を設定していますが、冷蔵庫や家具類と比べて「ピアノは全くの別物」と考えてください。さまざまなブログやサイトでは「補強工事は必要ありません」と書かれています。けれども、長い目で見ると対策はしておいたほうが良いと筆者は考えます。なぜなら、ピアノは局所的に荷重が集中するためです。特にグランドピアノは、300~600㎏の荷重を細い3本の脚(キャスター)で支えることになるため、荷重が一点あたり100~200㎏かかり続けることになります。更に、一度設置したピアノは動かす機会はほぼないと言っていいでしょう。そのため長期的に見ると、床に歪みや沈みが生じないとは言い切れないのです。
3-2. ピアノの対策は重さと音だけではない
ピアニストが演奏している姿は皆さんも目にしたことがあるかと思います。曲にもよりますが、全体重をかけて演奏する姿や、ペダルを何度もぐっと踏みこむ様子からかなりの振動が発生していると言えます。ピアノの音色とは違う響きや振動もあることを知っておくと良いでしょう。
3-3. 補強しないとどうなるの?
同じ場所に継続して荷重がかかり続けることになるので、長い時間経過と共に床が沈んだり歪んだりする恐れがあります。もちろん荷重がかかるところには床に跡が残るでしょう。大きな金庫に例えると分り易いかもしれませんね。木造住宅では、床の沈みや歪みが家全体の耐久性に影響を及ぼす可能性も高くなります。また高価なピアノ本体にも、歪みによる音色や内部構造の劣化、故障のリスクが出てきます。そのため、ピアノを搬入する前に床対策をとっておくことが重要となります。住まいとピアノを守る将来への投資として考えてみてはいかがでしょうか。
4. ピアノはどうやって家に搬入するの?
ピアノを搬入する場合はピアノ専門の運送会社を利用します。ピアノを初めてお迎えするかたは、どうやって搬入されるのか気になるかと思います。基本的に必要な事項は4つで、①搬送先の床の強度、②悪天候のときの対応、③見積もり前の打ち合わせの有無、④運送後の調律の有無などがあります。これらは予めピアノを購入した先で確認しておくことをお勧めします。
4-1.グランドピアノの搬入方法
国産のメーカーのYAMAHAのグランドピアノは、本体と脚・ペダル部を取り外すことができます。そのため、本体を縦向きに運べば、意外と狭い入り口や廊下も通り抜けることができます。ピアノについては、ピアノ専用のプロの運送会社が存在します。ピアノメーカーと提携している会社もあるかと思います。基本的に屋内の運搬は人力で、毛布などで床に養生しても床につけないように運びます。あたるとキズができてしまうような箇所もきっちりと養生をしてから運んでくれるので安心してください。海外製のグランドピアノ代表スタインウェイでは、ピアノの屋根(蓋)もはずして梱包するようです。2階以上の高さへ搬入する場合は、リフトで吊り上げます。搬入後組立をして位置をきめたら終了です。2階以上に上げる時は窓などから搬入することもあります。その他のメーカーについても搬入の方法を確認しておくことが大切です。
4-2.アップライトの搬入方法
アップライトの搬入方法は、丸ごと毛布などで養生してまるごと運びます。場所によりますが、グランドピアノと搬入方法はほぼ同じです。2階以上の場合はリフトを使うか人力で運ぶか、ピアノ運送会社の方が判断します。
4-3.ピアノ運送の料金は?
運送会社によって運搬費用は様々です。また、ピアノのタイプや大きさ、距離、搬入の難易度などによって異なります。ピアノをご購入された販売メーカーなどに問い合わせてみましょう。
5. 荷重を分散する便利アイテムたち
床補強をせずにピアノを設置する場合でも、ピアノのキャスターは直置きせず専用のキャスターカップと呼ばれるものを設置しています。それ以外にも 以下のアイテムを活用することで荷重を分散し、床へのダメージを軽減できます。
・カーペットやマット:防音効果も期待できるため、特に電子ピアノやアップライトピアノに適しています。
・ピアノボード:床に敷くことで重量を広範囲に分散します。
・硬質ゴム製インシュレーター や防振マット:振動を吸収し、階下への音漏れを軽減します。
・床補強ボード:ノーマルタイプや断熱&防音タイプがあり、大きい円形状で耐荷重を分散します。
6.そのほかのピアノの防音対策
6-1. 内窓を付けてみる
内窓をつけるのも防音対策には効果的です。外からの騒音を遮断すると同時に、家の中の音も外に漏れづらくなります。断熱効果がアップし、結露を防ぐことができるためピアノにも良い環境をつくることができます。
6-2. 本気の方は防音室もおすすめ
ピアノを本気で練習するなら、防音室の検討も視野に入れましょう。ピアノを本気で練習する人は一日8時間以上弾くので、好きな時間に思い切り弾ける環境が必要です。但し防音室は大きさによって300kg弱から1t近くの重量になるため、構造計算から設計を見直す必要があります。詳しくは関連記事注文住宅の防音対策とは?気になる効果と重要項目を6つ紹介。をご覧ください。
まとめ
注文住宅でピアノを設置する場合、床の補強は重要な検討ポイントです。特にグランドピアノのように重量が大きいものは、建築基準法に準拠していても補強を考慮した方が長期的に見て安心です。新築であれば、事前にピアノの種類や設置場所を決め、建築会社と専門業者に相談しましょう。実際にYAMAHAさんでは、新築の引き渡し時期に合わせて購入されたピアノの納入をお願いされることが多いそうです。新しい家とピアノですばらしい門出になることでしょう。この記事が皆様のお役にたてたら幸いです。最後まで読んでくださりありがとうございました。