石巻市で熊の目撃情報が多くなっています。野生の獣に対する恐怖は想像しただけでもゾッとしますよね。全国的にも熊に関するニュースが増えている最中ですが、なるべくなら熊に会うことがないよう生活をしていきたいと願うものです。
私は工務店の監督をしているので、熊に詳しい専門家目線でのお伝えはできません。生まれたときから長らく山間の田舎に暮らしてきた経験とじいちゃんや叔父、登山好きな友人に教えてもらった内容、また私なり調べたことを精査した上で石巻市の皆様の役に立つ情報をお伝えしていきます。
石巻市で熊の目撃が増えている理由
直近では、8月24と25日に石巻市の南光町で熊の目撃情報がありました。しかし、熊が急激に増えたから目撃情報が増えている訳ではありません。目に見えるようになったのが今であって、実際はもっと前から様々な要因が蓄積されて今に至っています。
そもそも熊は人里に降りくるのは稀だった
日本の山林の生態系の頂点にいる熊は、山の奥深くで不自由なく暮らしており、そもそも熊が人里に降りて行動すること自体が稀でした。熊の餌となる木の実などが山で不作な年は、人里に降りてきて畑の作物や柿などの果物を荒らす被害が出て騒がれることはありました。しかし、昨今の熊の目撃情報や人的被害の情報は、近年では稀にみる異常事態と言っても過言ではないかもしれません。
なぜ石巻市でも熊の目撃数が増えたのか?
数年前に隣の町の女川町で熊の目撃情報があり、そのときも石巻市では様々な情報が飛び交いました。それほど珍しい出来事なのです。しかし、今は石巻市で目撃情報が増えている状況に変化してきました。原因としては様々な要因があると考えられますが、主に以下の4点があげられます。
- エサの不作
- 山からの人離れ
- 竹林の放置(筆者の実体験)
- 個体数の増加
- シカの増加
エサの不作
熊の目撃情報が多い年は、ドングリなどの木の実の不作が原因と言われることが多いです。実際に熊は、季節によって「春は山菜や新芽」「夏は果実や昆虫」「秋は木の実」など、食べ物が変化します。また、イノシシやシカの死体を食べて森林環境の汚染を守る役割を担っていることから「森の清掃員」や「森の番人」と言われています。石巻市には生息していませんが、北海道のヒグマのように魚類(鮭)を食べることもあり、冬眠に備えて秋にはドングリなどの栄養価の高い木の実を大量に食べます。
山からの人離れ
人間が山に入ることが少なくなったり、山間の地域から人が居なくなることで熊の生息域が広がってきている状況にあると考えられます。私たち人間の暮し方が変化し、田舎に暮らす若者が減っています。いまに始まったことではありませんが、ここ30年間で人間が暮らすエリアは大きく変化しました。地方では過疎が進み、都市部を中心とした中央集中型に変わりました。田舎に生まれたとしても、実家から離れて暮らすようになった人が多くなることで、所有している山の手入れが疎かになっている実態もあります。
竹林の放置
実際に石巻市のある地域で竹林が枯れているのを目にしました。竹林全体が茶色に変化し、葉が抜け落ちて枝だけの状態になっていました。急速に増えることで厄介者のイメージがある竹ですが、長年にわたり手入れしないと、このように枯れることがあります。これが何を意味するのかというと、熊が食べるタケノコの減少に繋がってしまうのです。
個体数の増加
山からの人離れのところで触れていますが、熊の生息域が拡大すると当然ですが個体数も増加します。水槽で金魚を飼ったことがある人ならわかると思いますが、小さい水槽で飼っているうちは、金魚はあまり増えません。しかし、大きな水槽に入れ替えて飼い始めると金魚の数が増え始めます。ある一定の数になると増えなくなりますが、熊もこの原理と同じように生息域が広がったことにより個体数が増えていると考えられます。ちょっと前のデータになりますが、環境省の調べで平成15年~平成30年にかけて東北地方では増加率が135%になっています。
シカの増加
石巻市ではシカの増加も原因の一つかもしれません。シカは山にある草や木の皮を食べています。牡鹿半島の山間の道を走ったことがある方はわかるかもしれませんが、シカが多い地域は雑草が生えておらず木々の間に落ち葉だけがある状況です。この状況と熊の目撃情報が増えていることに因果関係がないと感じる方もいるかもしれません。しかし、シカの増加は倒木の増加や生える草木の偏り(シカが食べる草木は減り、食べない草木が増える)を発生させており、山の生態系を狂わせる原因になっています。たとえば、これによりドングリなどの木の実が不作になる原因にも繋がっているとしたら、熊の目撃情報の増加と無関係ではないと言えると思います。
石巻市にある自宅の敷地内に熊を寄せ付けないためには
工務店の監督をしている私が皆さんにお伝えできることは、熊をご自身の敷地内や自宅周辺に寄せ付けない方法しかありません。熊の習性を理解し、どのような点に気を付ければいいのか学んでいきましょう。
熊はとても頭がいい動物
熊はとても頭が良い動物です。私の知り合いに登山が好きな人がいるのですが、その方は常々、熊のことを「歩く能力」や「歩く知能」と言っています。登山を趣味にしている方々の界隈でも熊は特に注意が必要な動物と位置づけされており、日ごろから熊鈴や熊スプレーなどの対策を絶対に怠らないようです。そして、頭が良いだけに厄介な熊の習性も教えてもらいました。
- 執着心
- 学習能力
- ステルス能力
執着心
熊は執着心が強い動物です。たとえば、過去に北海道で登山をしていた学生たちが犠牲になった事件は、熊の執着心の強さを象徴しています。ある学生が熊に荷物を奪われるのですが、スキをうかがってその荷物を奪い返します。それが熊の執着心に火をつけてしまい、いつまでも追われ続けてしまう原因にもなりました。
学習能力
熊はとても学習能力が高い動物として有名です。たとえば、北海道で有名になったヒグマに「OSO18(オソジュウハチ」のコードネームが付いた個体がいます。この熊の討伐に参加していた猟師さんの動画を見たのですが、実際の「OSO18」は熊の中でも頭の良くない個体だったと言っています。それでも、猟師の目と仕掛けた罠を掻いくぐり、4年間にわたり放牧中の牛66頭が犠牲になりました。この酪農家さんの気持ちを考えると居た堪れませんが、4年間も討伐されずにいたことを考えると学習能力の高さに注目してしまいます。
ステルス能力
あれだけ大きな体格をしながら、発見できないことに疑問を抱いたことがあります。熊が走って逃げるところに私が車で並走した経験がありますが、座席に座っている私の目線に熊の背中が移っていたのを明確に覚えています。当時は軽自動車のムーブに乗っていて、目線の高さは1mを越えていました。そこから推測するに熊が立ち上がったときの身長は1m以上になるのは明確です。それだけ大きな体格をしているのに、熊に遭遇した方の話を聞くと皆さん口々に「突然あらわれた」と言っています。私の叔父の話でも「なんの物音もなく気付いた時には目の前にいた」と語っており、大声を出して追い払ったことを自慢げに話してくれました。
自宅やその周辺に熊を寄せ付けないためには
石巻市だけでなく、私が住んでいる大郷町でも朝・夕の町内放送で熊の目撃情報が頻繁に流れます。町内放送での注意喚起の内容も含め紹介していきましょう。
- エサになるようなものを置かない
- 廃棄果実を適切に処分する
- 音を出す
- 熊スプレーの用意
- 周辺に隠れられる場所をつくらない
エサになるようなものを置かない
熊は嗅覚も優れているので、エサになるようなものが家の近くにあると寄ってくる可能性が高くなります。地域は忘れてしまいましたが、奈良漬けの匂いに引き寄せられ宅内に侵入して食べていた熊の話を聞いたことがあります。なので、近隣で熊の目撃情報がある場合は、コンポストに生ゴミを入れる行動は控えた方がいいでしょう。また、外でワンちゃんを飼っている場合も、注意しましょう。食べ残しがないことを確認したり、食べ残しがある場合は匂いが出ないよう配慮して処分しましょう。同じようにゴミの収集日の前日に玄関先や勝手口の外にゴミを置く習慣がある方は、見直すことをお勧めします。
廃棄果実を適切に処分する
ご自身のお家の敷地内に柿などの果実を成す木がある場合は、シーズン終了後の廃棄果実を適切に処分するようにしましょう。よく、収穫しなかった果実をそのまま放置している場合がありますが、熊にとってはエサなので寄せ付けてしまう可能性がでてきます。面倒くさいですが、適切に処分することをお勧めします。
音を出す
こちらの存在を知らしめるために、あえて音を出すことも有効です。朝であればラジオ体操を外に向けて流してみたり、熊の行動が活発になる前の夕方であればテレビの音量を少し高くして人間の生活圏内に入ってこないよう威嚇することもお勧めです。その際に、近隣の方々と協力して音出しするもの良い作戦かもしれません。単なる近所迷惑の回避にもなります。
熊スプレーの用意
万が一のことを考えると熊スプレーの用意も検討した方がいいと思っています。犬や猫とはわけが違い、じゃれあうくらいの力でも致命傷になりかねないのが熊です。人間相手の攻撃が通用しない訳ですから、バットだろうが木刀だろうが全力でシバイても効果がないのは明確です。ならば、専用のモノに頼る他ないと消去法的な考えに至ります。
周辺に隠れられる場所をつくらない
お家の周辺に草が生い茂っていると、そこに熊が隠れて潜む可能性がでてきます。できるだけお家の周りには草が生い茂ることがないよう、こまめに刈り払いを行いましょう。それ以外にも、物陰や死角になる場所を事前に確認しておくのも良い対策なのでオススメです。場所の特定に不安がある場合は、下の「無料相談窓口」からご連絡ください。専門家ではありませんが、私が直接お話を伺いに行きます!
もしも石巻市で熊を目撃したら
これだけ熊の目撃情報が相次ぐとご自身が目撃する場面も出てくるかもしれません。そんなときの対処法をお伝えしていきます。
熊を目撃した時の有効な対処法
普段の生活の中で可能性として考えられるのは、「道端で遭遇したとき」「遠くで見かけたとき」の2点になるかと思います。
- 道端で遭遇しときの対処法
- 遠くで見かけたときの対処法
道端で遭遇したときの対処法
ご自身が散歩をしているときなどに道端で遭遇した際は、熊の方を見たまま後ずさりをしつつ逃げる機会を伺いましょう。慌てて逃げる行為だけは絶対に避けてください。熊は逃げる物体を追いかける習性があります。エサと認識していない物体でも、背中を見せて逃げているモノがあると追いかけてきます。近くに民家があるときは、避難をさせてもらい安全が確保されるまで待機しましょう。冷静を取り戻したタイミングで石巻警察署や石巻市の防災課へ連絡を入れましょう。
最終手段は?
もしかすると、熊が自分目掛けて一目散に向かってくる場合もあるでしょう。そんなときは、腕を大きく広げて最大限自分の姿を大きく見せた状態で、ドスの効いた大声で「オォ~!」と威嚇しましょう。実際の参考になるか不明ですが、私の叔父はこの方法で目の前に現れた熊を追い払った経験があります。
遠くで見かけたときの対処法
車でドライブ中に、遠目に熊を目撃する場面もでてくるかもしれません。そのようなときは他人事にせず、石巻警察署や石巻市役所の防災課に連絡しましょう。連絡すると熊を見かけた地域への注意喚起が行われ、安全意識の向上に繋がります。あなたの通報が被害を少なくするための一役を担うのです。
エサをあげるのは絶対にダメ
ショート動画を見ていると、海外で野生の熊にエサを与えているシーンが流れてくることがあります。これの真似をしてエサを与えることは絶対にしないでください。やせ細っている姿を見ると感情的になりエサを与えたい気持ちになります。しかし、熊は人間からエサをもらうとそれを学習します。そうなると人里から離れなくなるのです。また、エサをもらえることを覚えた熊がエスカレートし奪おうとしてくる可能性も高くなります。
まとめ
石巻市で熊を目撃したときの対処法やご自宅に熊を寄せ付けない方法を紹介してきました。熊がどういった動物で気を付けるべき習性も理解して頂けたかと思います。ご自身の安全も大事ですが、地域全体で安全意識を高めることも大事になります。
最後に、熊と人間は相容れない生き物だと思っています。本来は、野生動物と人間には一定の距離間があり、干渉を避けながらの生活が成り立っていました。しかし、その状態は崩れてきました。冒頭にもありましたが、人間の暮らし方が変化したことで熊が変化した部分も否めないのです。
また、熊の目撃情報や被害があると、真っ先に「熊が悪者」になります。熊は悪くありません。私たち人間も悪くないです。熊が人里に現れる環境になってしまった、これが事実です。これからは、人里に現れた熊との共存が求められるよう時代が変化してくるかもしれませんね。
最後までお読みくださいり、ありがとうございます
最後まで読んでくださりありがとうございました。この記事が皆様のお役にたてたら幸いです。読んでみて疑問に思ったことや解決しなかったことがありましたら、ぜひ教えてください。いつでも気軽に聞きたい方にはLINEの友だち追加がおすすめです。ぜひご参加ください。