注文住宅を建てる際、多くの方が悩むも箇所の一つがバスルーム選びです。毎日使う場所だからこそ、機能性と快適性を両立させたいもの。しかし、選択肢が多すぎて、せっかくの中も住宅でも「何を基準に選べばいいかわからない」というお声をよく耳にします。この記事では住宅設計の観点から、後悔しないバスルーム選びのポイントを詳しくお伝えしていきます。予算から機能まで、総合的に判断できるポイントをご紹介していきます。ぜひ参考にしてください。
1.バスルーム選びで失敗しやすい3つのポイント
1-1. サイズ選びの落とし穴
最も多い失敗が「思ったより狭かった」というケース。カタログやショールームで見ると十分に感じても、実際に使ってみると窮屈に感じることがあります。特に注意したいのが、標準的な1坪(1.6m×1.6m)タイプ。一般的な家族構成なら問題ありませんが、身長の高い方や介護の必要性を考慮する場合は、1.25坪以上を検討することをお勧めします。
1-2. お掃除のしやすさを軽視
デザイン性を重視するあまり、メンテナンス性を見落とすケースも多々あります。特に天然石や複雑な形状の浴槽は、見た目は美しいものの、カビや汚れが蓄積しやすく、長期的に見ると手入れが大変になることも。
1-3. 将来性を考慮しない選択
現在の家族構成やライフスタイルのみで選んでしまい、将来的な変化に対応できないという問題もあります。高齢になったときのバリアフリー対応や、家族構成の変化などに対応できるよう、先を見越した選択が重要です。
2.バスルームのタイプ別特徴と選び方
2-1.ユニットバス(システムバス)
現在の主流となっているのがユニットバスです。工場で製造されたパーツを現場で組み立てるため、品質が安定しており、コストパフォーマンスも優秀です。
●ユニットバスのメリット
ユニットバスのメリットはまず工期が短いことです。通常1日~2日で設置が完了します。また、防水性が高く水漏れのリスクが低いこと、メンテナンス性に優れていることが挙げられます。オプションも豊富なので、色々と選べるところも魅力です。
●ユニットバスのデメリット
せっかくの注文住宅なのに…とお思いの方もいると思われますが、コスト面にフォーカスしているためデザインの自由度は限られてきます。また、既製品を使用するため、特殊な間取りに対応しにくいという点があります。
●選び方のポイント☝
メーカーごとに特徴があります。バスルーム各社のショールームを実際訪れてみて、触り心地や使い勝手を確認しましょう。特に浴槽の形状や深さは、実際に入ってみないとわからない部分が多いです。
2-2.在来工法(造作バス)
職人が現場で一から作り上げる在来工法は、完全オーダーメイドのバスルームを実現できます。
●造作バスのメリット
造作バスは完全自由設計が可能であることから、天然石やタイルなど素材の選択肢が広がります。また、特殊な形状の浴室にも対応が可能で、高級感のある理想のバスルームを作ることが可能です。
●造作バスのデメリット
・コストが高い(ユニットバスの1.5-2倍程度)
・工期が長い(2-3週間)
・防水工事の品質に左右される
・メンテナンスが複雑
●選び方のポイント☝
在来工法を選ぶ場合は、施工実績豊富な業者選びが最重要。防水工事の技術力が仕上がりを大きく左右するためです。
3.サイズ選びの基準とポイント
・0.75坪(1.2m×1.6m)
マンションなどでよく採用される最小サイズ。一人暮らしや夫婦二人の場合は問題ありませんが、小さなお子さまがいる家庭では手狭に感じる可能性があります。
・1坪(1.6m×1.6m)
最も一般的なサイズ。4人家族程度まで対応可能で、コストと機能性のバランスが良いです。ただし、将来的なバリアフリー対応を考慮すると、やや窮屈に感じる場合もあります。
・1.25坪(1.6m×2.0m)
ゆとりのある設計が可能。車椅子での利用も想定でき、将来性を考慮した設計におすすめです。洗い場も広く取れるため、介助が必要な場合にも対応しやすいサイズです。
・1.5坪(2.0m×2.4m)
高級住宅でよく採用される大型サイズ。ジェットバスやミストサウナなどの設備も余裕を持って設置できます。ただし、冷暖房効率は劣るため、断熱性能の向上が必要です。
4.設備・機能選びのチェックポイント
浴槽の選び方
主な形状の種類
形状 | 特徴 |
ストレート型 | シンプルで掃除しやすい |
アーチ型 | 肩まで浸かりやすく、リラックス効果が高い |
エルゴノミクス型 | 人間工学に基づいた設計で、疲労軽減効果 |
主な材質の種類
材質 | 特徴 |
FRP(強化プラスチック) | 軽量で加工しやすく、最も一般的 |
人造大理石 | 高級感があり、保温性に優れる |
ホーロー | 保温性・保湿性に優れるが、重量がある |
ステンレス | 衛生的で耐久性が高い |
5.その浴槽、入浴剤は使える?
意外に見落としがちなのが、入浴剤が使用できるかどうかです。リラックス効果や健康のために入浴剤を使いたい方は、浴槽の材質によって使えるものと使えないものを事前に確認しておきましょう。
5-1.入浴剤使用ができる浴槽の材質について
浴槽の種類 | 一般の入浴剤 | 酸性 | アルカリ性 | 中性 | 塩 | 炭酸系 | 硫黄系 | 浴槽の特徴 |
FRP(強化プラスチック)浴槽 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | コスパがよく、入浴剤愛用者に最適 |
人造大理石浴槽 | 〇 | △ | △ | 〇 | △ | 〇 | ✕ | 保温性は良いが使用できる入浴剤は限られる |
ホーロー浴槽 | 〇 | ✕ | △ | 〇 | ✕ | 〇 | ✕ | 保温性は良いが使用できる入浴剤は限られる |
ステンレス浴槽 | 〇 | ✕ | ✕ | 〇 | ✕ | △ | ✕ | 衛生面は良いが、入浴剤が好きな人には不向き |
天然石浴槽
(御影石・大理石など) |
△ | ✕ | △ | △ | ✕ | △ | ✕ | 酸性は溶けるリスクあり。着色材でシミになる可能性が高く、浴槽の天然素材の風合いを楽しむもの |
※あくまでも追い炊きしない場合の目安となります。塩;バスソルト[塩化マグネシウム、エプソムソルト(塩酸マグネシウム、硫酸マグネシウム)]
5-2.選び方のポイント☝
入浴剤を頻繁に使用する予定がある場合は、FRP製の浴槽が最も安心です。人造大理石も多くの入浴剤に対応していますが、使用する入浴剤の成分を事前にメーカーに確認することをお勧めします。更に、浴槽は使用可能でも、追い炊きすると配管を傷めたり給湯器の故障につながる可能性があるので、使用時には必ず確認が必要です。これ以外に、研磨成分となる炭酸カルシウムや酸化チタンを含む入浴剤は粒子が配管を研磨してしまう恐れがあります。また、にごったお湯、バスボムなどに含まれる固形のもの、花びらなどもフィルターの目詰まりや給湯器の不具合が起こる可能性があるので、使用する前に必ず確かめましょう。更にジェットバス機能付きの浴槽の場合、入浴剤の泡立ち成分が配管内に残留する可能性があるため、使用可能な入浴剤がさらに制限されます。購入前に必ずメーカーに確認しましょう。
6.換気・暖房設備
6-1.浴室暖房乾燥機は必要なの?
浴室暖房乾燥機は、今のバスルームに欠かせない設備の一つです。特に寒冷地や小さなお子さま・ご高齢の方がいる家庭では必須と言えるでしょう。
6-2.浴室暖房設備の主な機能
浴室暖房設備はメーカーやグレードによっても異なりますがの主な機能として次のようなものがあります。
暖房:入浴前の予備暖房で、ヒートショック防止
乾燥:洗濯物の乾燥や浴室の湿気対策
換気:カビの発生を抑制
涼風:夏場の入浴時の暑さ対策
6-3.電気とガスどちらを選ぶ?
予硬質暖房設備には電気式とガス式があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。ガス式は暖房力が強く、ランニングコストが安い傾向にありますが、設置工事が複雑になります。
7.水栓・シャワー設備
●サーモスタット混合水栓
温度調整が簡単で、お湯の無駄遣いを防げます。特に小さなお子様や高齢者がいる家庭では安全性の観点からも重要です。
●節水シャワーヘッド
従来品と比較して30-50%の節水効果があり、長期的には大きなコスト削減につながります。水圧を維持しながら節水できる製品を選びましょう。
8.予算設定と優先順位の付け方
8-1.予算の目安
ユニットバス | |
エントリーモデル | 60-80万円 |
スタンダードモデル | 80-120万円 |
ハイグレードモデル | 120-200万円 |
在来工法 | |
基本仕様 | 150-250万円 |
高級仕様 | 250-500万円 |
8-2.優先順位は?
限られた予算の中で最適な選択をするために、以下の順序で優先順位を付けることをお勧めします。
●基本性能(防水性・断熱性・換気性能)
後から改修が困難で、生活の快適性に直結するものです。
●サイズ・レイアウト
構造に関わる部分のため、後から変更するには大規模な工事が必要です。
●安全性機能(手すり・滑り止め・暖房など)
将来的な安全性を考慮した設備は初めから考えておきましょう。
●デザイン・仕上げ材
見た目に関わる部分は、予算に余裕に検討してみましょう。
●付加機能(ジェットバス・ミストサウナなど)
贅沢機能は最後に検討。メンテナンス費用も考慮しましょう。
9.メンテナンスのしやすさから選ぶ
9-1.掃除しやすい設計に
床材の選択
最新のユニットバスでは、汚れが付きにくく、乾きやすい床材が開発されています。特に「カラリ床」や「サーモフロア」などの製品は、従来品と比較して格段にメンテナンス性が向上しています。
壁材・天井材
継ぎ目が少なく、表面が滑らかな素材を選ぶことで、カビの発生を抑制できます。また、抗菌・防カビ機能付きの製品も多数出ているため、予算が許す範囲で検討しましょう。
排水口の形状
髪の毛や石鹸カスが溜まりにくい形状の排水口を選ぶことで、日常の掃除が格段に楽になります。
10.長期メンテナンス計画
これから長く住まう家ですので、将来かかるコストやライフステージも考慮した計画が必要となってきます。
10-1.バスルーム設備の交換時期
バスルーム設備の一般的な交換時期のめやすは以下の通りです。
設備機器名 | 交換時期のめやす |
給湯器 | 10-15年 |
浴室暖房乾燥機 | 10-12年 |
水栓金具 | 10-15年 |
シャワーヘッド | 5-10年 |
パッキン類 | 5-7年 |
これらの交換時期を見越して、メンテナンスしやすい製品を選んでおくことで、長期的なコストを抑制できます。
10-2.バリアフリー・将来に対応した計画
●入り口の段差対策
従来の浴室では2-3cmの段差があることが一般的でしたが、現在では段差のない設計が可能となっています。将来的な車椅子利用や歩行困難時に備えて、できる限り段差のない設計を選びましょう。
●手すりの設置
新築時に下地を入れておけば、後から必要に応じて手すりを追加できます。特に以下の場所への設置を検討しましょう。
浴槽への出入り部分(縦手すり)、洗い場の壁面(横手すり)、浴室入り口付近など
●浴槽の高さと深さ
またぎやすさを重視するなら、浴槽の立ち上がり高さは40cm程度が理想的です。深すぎる浴槽は転倒リスクが高まるため、安全性も考慮した選択が重要です。
11.失敗しないためのチェックリスト
最終的な選択をする前に、以下の項目を施工業者の担当と一緒にチェックすると良いでしょう。
●設計段階でのチェック項目
□ 家族構成の変化を考慮したサイズ選択ができているか
□ 将来のバリアフリー対応が可能な設計になっているか
□ 換気・暖房設備は適切に計画されているか
□ 給排水の配管の計画に無理がないか
□ 隣り合う部屋への音の影響は考慮されているか
●設備選択でのチェック項目
□ 実際に使う人の体型に合った浴槽サイズか
□ 掃除・メンテナンスの手間は許容範囲か
□ 安全性に関する機能は十分か
□ 予算内で本当に必要な機能を選択できているか
□ 施工業者の技術や実績は信頼できるか
●契約前の最終チェック項目
□ ショールームで実物を確認したか
□ 似たようなバスルームを見学したか
□ 保証内容・アフターサービスは十分か
□ 追加費用の可能性について説明を受けたか
□ 工期・引き渡し時期は現実的か
細かいことかもしれませんが、これらを確認しておくことで、安全で安心な浴室設計が叶うことでしょう。
12.まとめ
注文住宅のバスルーム選びは、一生に一度の大きな決断です。デザインの美しさだけでなく、機能性、安全性、メンテナンス性を総合的に判断することが重要です。特に重要なのは、現在のニーズだけでなく、10年後、20年後の生活スタイルの変化まで見据えた選択をすること。初期投資は高くなっても、長期的な満足度や安全性を考慮すれば、決して高い買い物ではありません。専門知識を持つ設計者や施工業者との十分な打ち合わせを重ね、複数のショールームで実物を確認し、納得のいく選択をしてください。理想のバスルームがあなたの日常に、豊かなリラックスタイムをもたらしてくれることでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。宜しければ関連記事「エコキュート、そろそろ交換時期?補助金も出る給湯省エネ2025事業」も併せてお読みいただければ幸いです。