「地獄の窯の蓋が開く」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。なんだか怖いものをやマイナスなイメージをもつ方も多いと思います。この記事では、「地獄の窯の蓋が開く」という言葉の持つ意味やその由来、現代の考え方や建築業界で大切にされてきた慣例などを今回ご紹介していきます。
1.「地獄の窯の蓋が開く」ってどういうこと?
「地獄の窯の蓋が(も)開く」という言葉は、日本の古来から伝わる慣用句の一つです。「地獄の窯の蓋が開く日」は、閻魔大王が休息をとる日といわれ、主に「抑えられていた災厄や混乱が一気に表面化すること」を指します。蓋が開くことで、魑魅魍魎が抜け出てきて災難をもたらす日と考える方もいらっしゃいますが、実際は異なる意味です。
2.閻魔様だって休む!
閻魔様は、仏教の世界で死者を裁く神格的存在であり、地獄での厳格な裁きを行う役割を担っています。しかし、年に数回だけ閻魔様が休息を取る特別な日があり、その間、地獄の門や窯の蓋が開くとされています。この「閻魔様の休日」は、亡者を煮るという地獄の釜も蓋をあけて休むところから、罪人たちが一時的に苦しみから解放され、地獄もまた静寂に包まれる日と考えられます。このような背景から、「地獄の窯の蓋が開く」という言葉は、恐怖の象徴というより、「閻魔様も休むんだからみんなも休もうよ」というニュアンスを含んだおおらかな解釈になったと言われています。これらの日は閻魔大王の縁日である「閻魔賽日(えんまさいにち)」の中でも大きな縁日で、「大斎日(だいさいにち)」とも呼ばれます。
3.地獄の窯の蓋が開く日はいつ?
「地獄の蓋が開く日」は、旧暦の1月16日と7月16日とされていましたが、今では現在の暦で正月の16日と盆の7月16日とされるのも見かけます。ちなみに旧暦の1月16日は2025年だと2月13日、旧暦の7月16日は2025年の9月7日にあたります。更に地域によっても日付は異なるようです。そしてこの日は「いわゆる「藪入り(やぶいり)」の日に由来しています。藪入りとは、江戸時代に奉公人や嫁が正月と盆の16日前後に休暇をもらって実家に戻る慣習です。昔は休みなどなかった時代のため、このような風習があったとされています。ちなみに地獄の窯の蓋が閉じる日も同日とされています。
4.閻魔様がいない地獄ってどうなっているの?
閻魔様がお休みしている間の地獄の様子はどうなっているかというと、諸説ありますが罪人へ呵責を与える鬼たちもお休みなので、地獄に落ちた者たちもいったん休憩となるそうです。脱走したりするのかと思っていましたが、そのような記述は見つかりませんでした。また天国行きか地獄行きの判断を下せないため、判断待ちの霊魂がさまよっていたりなんてこともあるとかないとか。いかに閻魔大王の影響力が大きいかわかるお話ですね。
5. 建築業界から見た「地獄の蓋が開く日」に避けるべきこと
「地獄の窯の蓋が開く日」には、慎まれる行動があります。閻魔様がお休みの日として考えられるため、普段以上につつましく過ごし、不用意な行動を避けることが推奨されています。大切な作業は避ける日だということです。
5-1.家にまつわる大事な儀式はNG
地鎮祭や上棟式、引き渡しなど、建築業界における重要な儀式は、この日に重ならないよう配慮されることがあります。また、工事スケジュールを立てる際にも、地獄の窯の蓋が開く日は避けることが、縁起を担ぐ上で考慮されるポイントの一つです。関連記事の「注文住宅の地鎮祭は必要?今どきの事情を解説!」もご覧ください。
5-2. 家の工事や土を掘る作業
正月の間は新しいことを始めるのに良い時期とされますが、地面を掘る作業は避けるべきとされています。これは地中に眠る霊や霊的エネルギーを刺激しないためです。特に旧暦1月16日の閻魔賽日を含む正月期間は、地面を掘る作業は控えるべきという伝統的な考えが強く影響しています。
5-3. 新築工事の着工や引き渡し
正月は祝い事の多い時期ですが、「地獄の窯の蓋が開く」とされる日は、建物の着工や引き渡しといった重要な儀式を避けるべきとされています。これは、その日に不浄な霊が入り込むリスクがあると考えられるためです。
5-4. 争いや大声を出す行為
正月は家族や親戚とともに過ごす時期ですが、1月16日の閻魔賽日には特に争いや大声を出すような行為を控えるべきとされています。この日は「霊が現世を漂いやすい日」とされており、感情的な行動は邪気を招くと考えられていました。また、地元石巻では刃物には気を付けるべき日といわれています。
5-5. 閻魔様もお休みするからみんなも休もう!
これらの伝統的な考え方は、ただの迷信として片付けるのではなく、先人たちが「休むことの大切さ」を意識していたことの象徴でもあります。正月の忙しさや建築現場の慌ただしい日々の中で、「閻魔様のお休み」という文化的背景を尊重し、適切な休息を取ることが、より良い仕事や生活につながるでしょう。
6. まとめ
「地獄の窯の蓋が開く」という言葉は、災厄や混乱を象徴するだけでなく、「閻魔様がお休みを取る日」という深い意味合いを持っています。特に旧正月の1月16日や彼岸明けといった日は、昔から「休むべき日」とされてきました。建築関係においても、これらの日に重要な作業を避け、無理をしないスケジュールを立てることは、文化的背景を尊重しながら現代の仕事にも活かせる大切な知恵といえるでしょう。この記事が参考になれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。