「マイホームが欲しいと思ったら、とりあえず住宅展示場に行けば方向性が見えてくる」——そう考える人は少なくありません。しかし実際に足を運ぶと、最新設備やおしゃれな空間、営業担当の丁寧な説明に気持ちが引っ張られ、「なぜ家を建てたいのか」という出発点を置き去りにしたまま話が進んでしまうことがあります。
住宅金融支援機構が2023年10月に実施した調査(今後5年以内に住宅取得を計画する20〜69歳、約1,500人が対象)を見ると、家づくりを考える人たちのリアルな温度感が浮かび上がってきます。展示場に行く前に本当に知っておきたいことの一つに、最新のスペックよりも「ほかの人たちが、どんな日常の変化をきっかけに家づくりを決めたのか」という具体的な経緯もあると思います。今回は、この全国調査のデータと石巻市の統計・支援制度を交えながら、先輩たちが家づくりを決めた「瞬間」を整理してお伝えします。
1. 結婚・出産という節目

同調査で住宅取得の動機を年代別に見ると、30歳代では「子供や家族のため、家を持ちたい」が半数を超え、全世代・全項目のなかでも突出した数字になっています。20歳代でも「結婚、出産を機に家を持ちたい」が4割を超え、30歳代を上回りました。単身生活から二人暮らしに変わると、賃貸を続けるか自分たちの拠点を持つかという選択肢が生まれ、そこに「子供が生まれる前後の生活」まで見据えた検討が重なっていく——そんな流れがうかがえます。
石巻市には新婚世帯向けの「結婚新生活支援事業補助金」があり、令和8年度も一定の条件を満たす世帯に住宅取得費や引っ越し費用の一部が補助されます。とはいえ、結婚してすぐに建てる必要はありません。まずは賃貸で暮らしながら生活スタイルを固め、そのうえで検討する世帯も少なくありません。
2. 子どもの誕生で、暮らしの見え方が変わる

妊娠や出産を境に、それまで気にならなかった部屋の狭さや動線が急に気になり始めます。ベビーベッドを置く場所がない、家事をしながら子どもの様子を見たい、泣き声で周囲に気を使いたくない……。こうした具体的な困りごとが、間取りへの要望に変わっていきます。
同調査でも、住宅取得時に重視する項目として「価格・費用」に次いで「間取り」が上位に挙がっており、子育て世帯ではその意識が特に強く働くと考えられます。部屋数そのものより「家事・育児の動線」が住み心地を左右する場面は多く、洗濯物を干す位置や帰宅後の手洗いの流れといった細部の積み重ねが、日々の負担を減らします。
3. 「今の家、少し狭いかもしれない」という日常の気づき

大きな出来事がなくても、「手狭になってきた」と感じる瞬間がきっかけになることもあります。子どもの成長とともに服や本、習い事の道具は増え続け、収納の不足や家族の居場所の少なさが少しずつ不満として積み重なっていきます。
こうした「質の向上」を動機に挙げる人は年代を問わず一定数存在し、調査でも「もっと広い家に住みたい」「もっと質の良い住宅に住みたい」がどの世代でも一定の割合で挙がっています。いま困っていなくても、5年後・10年後の暮らしを一度想像してみる。それだけで、検討を始めるタイミングが見えてくることがあります。
4. 石巻市で進む「世帯数の増加」という地域の背景

石巻市の令和8年6月末時点の人口は約12.9万人、世帯数は約6.25万世帯です。人口自体は減少傾向にある一方、世帯数はこの数年で3,300以上増えています。核家族化が進み、親世帯と子世帯が別々に暮らすケースが増えていることが背景にあります。
つまり、地域全体として新しい暮らしの拠点を必要とする世帯が着実に増えているということです。全国調査でも「親の介護の関係等で住み替えの必要に迫られた」を動機に挙げる人がおり、世帯分離の流れは石巻に限った現象ではないことがわかります。
4-1.自治体の子育て支援制度という後押し
石巻市には、市外から移住する子育て世帯向けの「定住促進住宅取得等補助金」があります。15歳以下の子どもを扶養する世帯が住宅を取得する場合、基本補助金に加えて条件に応じた加算があります。同調査でも「住宅取得促進策が実施されているから」を買い時の理由に挙げた人は1割に満たないものの、後押しとして一定の役割を果たしていることがわかります。ただし、補助金があるから建てる、という順番ではなく、まず自分たちの資金計画を立てたうえで活用を検討するのが本来の順序です。
5. 子どもの成長・進学のタイミング

出産のとき以外にも、小学校入学や中学・高校への進学、兄弟が増えたタイミングで住まいを見直す家庭は多くあります。子どもが自分の部屋を必要とする期間は、家族の歴史のなかではごく一部です。小さいうちから、独立後の使い道まで見据えて間取りを考えておくと、後々の融通が利きます。40歳代・50歳代のほうが20歳代・30歳代より「教育や子育て環境」を動機に挙げる割合が高く、住まいと通学・進学の関係を意識する時期が子どもの成長段階に応じて後ろにずれていく傾向が見て取れます。
6. 「家賃を払い続けること」への疑問と、買い時をめぐる本音
「毎月家賃を払うより、資産になる持ち家のほうがいいのでは」——経済的な理由から検討を始める人もいます。「資産として住宅(不動産)を持ちたい」を動機に挙げる人は一定数おり、特に40歳代でやや高めです。
一方で、「今が買い時だと思う」と答えた人は2023年10月調査で4人に1人程度にとどまり、前回調査からやや減少しました。「買い時とは思わない」「分からない」を合わせると7割を超え、判断を保留する層が最も多いのが実情です。買い時と感じている人の理由としては「住宅ローン金利が低水準だから」が最も多く、「住宅価格が値上がりしそうだから」が続きます。実際に住宅ローンの金利も住宅価格も材料費・人件費の高騰により今後高くなることが予想されます。いずれにしても、マイホームを考えるなら早めに準備をするに越したことはありません。ただし、持ち家になると住宅ローンに加えて固定資産税や火災保険料、将来の修繕費もかかります。月々のローン返済額だけでなく、車の買い替えや教育費まで含めた長期の資金計画に無理がないかを確認することが欠かせません。
7. 「買い時」に対する不安の中身

金利や資材価格、景気の動向など、気になる材料は尽きません。同調査で「買い時とは思わない」「分からない」と答えた人に理由を尋ねたところ、多かった順に「将来の収入や生活への不安」「景気の先行きが不透明」「気に入った物件、条件に合う物件がない」「自己資金・頭金が不十分」と続きました。
年収別に見ると、年収が低い層ほど「将来の収入や生活への不安」「収入が減った」といった資金面の不安が強く出る一方、年収が上がるにつれて「気に入った物件、条件に合う物件がない」という選択肢そのものへの不満が相対的に増えていく傾向も見られます。つまり、「買い時かどうか」という迷いの中身は、世帯の資金状況によって性質が変わるということです。社会全体のタイミングよりも、自分たちの家計と暮らしのタイミングに目を向けたほうが、判断の軸がぶれにくくなります。
なお、住宅ローンの金利タイプは「変動型」を希望する人が最も多く、「固定期間選択型」「全期間固定型」と続きます。今後1年間の金利見通しについては「現状よりも上昇する」と答えた人が半数を超え、前回調査より増えました。金利の先行きに対する警戒感が、検討のスピード感にも影響していると考えられます。
8. 石巻の風土に合わせた土地・建物選び
石巻で家を建てるなら、地域の暮らしに合わせた計画が必要です。自家用車を前提にした駐車場やアプローチ、海や川からの距離とハザードマップの確認、冬の寒さと夏の暑さに耐える断熱性。同調査でも、価格に次いで「立地(災害などに対する安全性)」や「耐震性能」を重視する人が多く、安全性への関心の高さが読み取れます。敷地選びの段階から、将来にわたって安全に快適に暮らせるかという視点を持つことが大切です。
9. 地元の木材を使うという選択肢

石巻市には「石巻市産木材利用住宅促進事業」があり、地元の木材を一定以上使って新築する際に補助金が支給される制度があります。自分たちの住まいをつくることが、地域の産業や環境を支えることにもつながります。
10. 資金計画と相談先|多くの人が「自分で調べて、専門家にも聞く」

住まいを検討する過程で、実際にどれくらいの人が資金計画を立てているのでしょうか。同調査では、資金計画や住宅ローンの借入計画の作成・相談を「行った」と答えた人が6割を超えました。相談方法としては、インターネットの住宅情報サイトを使って自分で行った人が最も多く、次いで住宅事業者の営業担当への相談、住宅情報誌を使った自己流の情報収集と続きます。自分で調べることと、専門家や事業者に相談することを組み合わせている人が多いという結果は、家づくりが「一人で抱え込む作業」ではなく「情報を集めながら、対話を通じて固めていくもの」であることを示しています。展示場に行く前の段階で、こうした情報収集を少しずつ進めておくと、実際に相談する際の話がかみ合いやすくなります。
まとめ
家づくりを決めた瞬間は、特別な出来事とは限りません。「今より少し使いやすくしたい」「家族で楽しく過ごしたい」という、日々の小さな気持ちの変化がスタートになっていることのほうが多いのです。一方で、全国調査のデータからは、金利や資金への不安が検討を後押しすることも、逆に足踏みさせることもある、という両面が見えてきます。住宅展示場で間取りや設備を見る前に、まずはご家族で「これからどんな暮らしがしたいか」、そして「今の家計でどこまで無理なく計画できるか」を話し合ってみてください。
あおい創建では、家づくりを急がせることはありません。「まだ建てるか決めていないけれど、少し考えてみたい」という段階から、暮らしの整理をお手伝いしています。気になることがあれば、お気軽にお声がけください。
出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用予定者調査(2023年10月調査)】」(2024年1月23日公表)、石巻市人口・世帯数統計(令和8年6月末時点)
最後までお読みいただきありがとうございました。宜しければ関連記事「石巻で家づくり勉強会|失敗しない家づくりの始め方をわかりやすく解説」も併せてご覧いただけますと幸いです。


