家に入った瞬間に「なんだか落ち着く…」と感じることがあります。この“安心感の源”は、家の香りの影響が大きいと言われています。自分の家だからこそ、落ち着く香りに包まれたいものです。香りは日々の気分や疲れの感じ方にも関わってくるため、注文住宅では素材や換気の工夫を通して“自然で落ち着く香りが漂う住まい”をつくることが可能です。ここでは、暮らしに取り入れやすい「香りを整える家づくり」についてお伝えします。
1.家の匂いはどう作られる?

新築の家の匂いは、住む人たちの「自分の家の匂い」へと徐々に変わっていきます。家の匂いは、素材そのものの匂い、家族の体臭、食事、柔軟剤、ペット、ゴミなど、さまざまな要素が複合的に合わさって生まれます。
人は“嗅覚順応”によって自分の家の匂いに慣れてしまうため、同じにおいでも「臭い」と「匂い」を区別して、やわらかな香りを少しだけ足すのが理想的と言われています。
ここで重要なのが 素材・換気・生活習慣の3つ です。たとえば、無垢材や漆喰などの自然素材には、やわらかな香りや空気の調整作用があると言われています。換気計画は“匂いの溜まり”を防ぎ、生活習慣や家事動線によっても空気の質が変わります。注文住宅は、この3つをゼロから調整できるため、「落ち着く香りの家」を実現しやすいと言われています。
1-1.強い香りを好まない傾向
日本人は一般的に臭いに敏感で、強い香りを好まない傾向があると言われています。食生活や入浴習慣の影響で体臭が弱いため、海外のように香水を強くつける文化がありません。香りに敏感な方も多いため、柔軟剤さえ配慮する風潮も見られます。石けんやアロマ系の軽い香り、落ち着いた木の香りが好まれるのは、こうした文化的背景が影響しているのかもしれません。
1-2.あなたの家の匂いは大丈夫?
人は自宅の匂いに慣れていますが、帰宅直後の“嗅覚がリセットされた状態”で確認すると、自宅の匂いを客観的に感じられます。落ち着く香りで暮らすためには、まず 臭いの元を断つ ことが大切です。体臭・生ごみ・トイレ・ペット・タバコ・排水口・カビ・靴などの発生源を処理し、家そのものの香りを活かしつつ、良い香りを少し加えるのが近道です。
2.香りをつくる“素材の選び方”

2-1.無垢材がつくるやさしい香り
ヒノキやスギの香りは森林浴のような落ち着きを感じる人が多いと言われます。床や天井に少し取り入れるだけでも空気感が変わり、特に玄関やリビングに用いると家全体の印象がやわらかくなります。香りは時間とともに落ち着きますが、完全に消えるわけではなく、ほのかな残り香として“家の空気”を形づくります。
2-2. 漆喰・珪藻土が生むしっとりした空気
漆喰や珪藻土は「匂いを吸着しやすい」と言われる素材で、料理の残り香や湿気を含んだ空気をやわらげ、室内の匂いが一定に保たれやすい特徴があります。
2-3. 和紙や畳の穏やかな香り

和紙クロスは自然な紙の香りがほのかに感じられ、光の反射もやわらかいため落ち着いた空間をつくりやすい素材です。畳のい草も独特の落ち着きがあり、小上がりを設けると“香りの休憩所”のような空間が生まれます。
3.匂いがこもらない家の換気計画
香りを楽しむためには、まず空気が滞らない仕組みが必要です。一般的には、以下のような工夫が匂い対策として効果的とされています。
3-1. 玄関は「靴の匂いが広がらないようにする」
玄関の匂いは家全体の印象を左右します。シューズクロークを扉で仕切り、個別の換気をつけると匂いが混ざりにくく、来客時の印象もすっきりします。
3-2.キッチンは“抜け道”をつくる
料理の匂いが残るのは、空気の逃げ場がないからと言われています。料理の匂いは換気扇だけでは完全に吸いきれません。外に抜ける窓や回遊動線を取り入れ、空気の“逃げ道”をつくることが大切です。
3-3.ランドリールームは湿気対策を中心に
部屋干しの匂いは湿気が集中的に溜まることが原因となります。換気扇や除湿機の置き場を最初から想定してつくると、季節に左右されにくい快適な空気が保てます。
4.香りを“そっと足す”ための家づくり
素材や換気で土台が整ったら、今度は“香りを加える場所”を計画します。派手な芳香剤ではなく、住まいの中に穏やかな香りが行き渡る仕組みをつくるイメージです。
4-1.アロマのための小さなスペース

アロマディフューザーを置く棚やニッチ、ベッド横のコンセントなどを最初から設計しておくと、インテリアの一部として自然に香りを楽しめます。
4-2. 玄関にハーブや観葉植物
ユーカリやローズマリーなど、軽い香りをもつ植物を玄関に置くと、外から入った瞬間に“ほっとする空気”を感じやすくなります。植物を置く場所には、直射日光を避けつつ明るさを確保できるスペースがあると長持ちします。
4-3. 布製品の匂い対策
人が集まるリビングや寝室には、なかなか洗えないものが沢山あります。大きなソファーやラグマット、ベッドは洗えませんし、大きなカーテンも洗えないものがあります。使用可能なものかを確認して、こまめに消臭ミストを利用すると良いでしょう。
4-4. 薪ストーブやペレットストーブの“火の香り”

火を使う設備には独特のぬくもりがあり、燃える木の香りは落ち着いた雰囲気を演出すると言われています。安全対策が必須ですが、冬の暮らしに奥行きが生まれる設備の一つです。
5.“気になる匂い”を減らす設計の工夫

落ち着く香りをつくるには、逆に“気になりやすい匂いの発生源”を抑えることも大切です。
5-1.ゴミの置き場所はひと工夫
匂いの出やすいゴミは、キッチン横の収納の中にまとめたり、扉を一つ挟むだけでも空間の匂いが安定します。
5-2.トイレは湿気と空気の流れがポイント

トイレの匂いは湿気が原因となることが多いため、換気扇に加えて小さな手洗いカウンターがあると、湿った空気が分散しやすくなります。また、アンモニア臭などの匂いはクエン酸が効果的です。しっかり匂いの元を絶ってから香りを足すのが大切です。
5-3. ペットのための換気と素材選び
ペットと暮らす家庭では、ケージ周辺の床材を拭きやすいものにしたり、空気の流れが止まらないように小型換気をつけておくと、匂いのこもりが少なくなります。
6.季節ごとの香りで暮らしにゆらぎを
家の空気が整っていると、季節に合わせて香りを変える楽しさも広がります。
春は軽いラベンダーや桜の香り、夏は柑橘やユーカリの清涼感、秋冬はウッディやバニラのぬくもりなど、季節の変化を香りで味わうと気分も切り替わります。
まとめ
落ち着く香りの家は、素材・換気・暮らし方が自然に調和して生まれます。注文住宅なら、香りの計画を最初から盛り込みやすいのが魅力です。香りは記憶とつながり、帰るたびに心がほっとする空間をつくってくれます。ぜひ家づくりの一つの視点として取り入れてみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。宜しければ「在宅ワーク時代の注文住宅!住まいの優先順位の新常識とは」も合わせてお読みいただけますと幸いです。


