家を建てるとき、多くの人が「せっかくなら、自分たちらしい家にしたい」と考えるでしょう。注文住宅は、その願いを叶える大きなチャンス。間取りやデザイン、素材などを自由に選べるのが魅力です。そんな中で、近年人気を集めているものの一つに「小上がり(こあがり)スペース」があります。名前は聞いたことがあるけれど、どんな空間なのかピンとこない方も多いかもしれません。
今回は、小上がりスペースについて、わかりやすくお伝えしていきます。
1.小上がりスペースとは?
「小上がりスペース」とは、部屋の床の一部を数十センチだけ高くしたスペースのことです。だいたい15cm〜40cm程度高くなっており、その上には畳やフローリング、カーペットなどを敷くことが多いです。もともとは、昔の日本の家屋にあった「座敷」や「畳の間」のような場所を、現代の暮らしに合わせてアレンジしたものと考えるとイメージしやすいでしょう。最近では、リビングの一角に小上がりスペースを設けて、そこをくつろぎスペースや子どもの遊び場に使ったり、ベッド代わりにしたりするご家庭も増えています。
2.小上がりスペースのメリット
小上がりスペースにはたくさんのメリットがあります。それぞれお伝えしていきます。
2-1. 多目的に使える便利な空間
小上がりスペースは、使い方次第でいろいろな役割を果たしてくれます。
・昼間はリビングの一部として、家族のくつろぎの場に
・夜は布団を敷いて寝室代わりに
・子どもの遊び場としても安心
・来客時には座って話せる畳の間に早変わり
このように、一つのスペースで何役もこなしてくれるのが、小上がりの大きな強みです。
2-2. 床下収納として活用できる
小上がりスペースの床下は、段差がある分、収納として活用しやすくなっています。引き出しをつけたり、床を開けて物を入れられるようにしたりすれば、季節のものや日用品のストックなどを収納するのに便利です。特に、収納スペースが限られがちな限られた土地に家を建てる際は、この「+αの収納」はとても助かります。
2-3. 空間にメリハリが生まれる
床に高低差があると、視覚的にも空間に変化が生まれます。リビングと小上がりスペースが一続きでも、自然と「ここは別のゾーン」という意識ができるのです。壁で仕切らなくても、段差によって空間を分けることができるので、開放感を保ちながら部屋を使い分けたいときにぴったりです。
2-4. 座って過ごす文化にフィット
日本では、昔から床に座る文化があります。小上がりスペースは、その伝統を現代風に取り入れたもの。畳に座ったり、ごろんと寝転がったりできるので、落ち着いた気持ちで過ごすことができます。椅子よりも床に座る方が落ち着く、という方には特におすすめです。
小上がりスペースのデメリット
もちろん、小上がりスペースにもデメリットはあります。家づくりに取り入れる前に、注意すべき点も知っておきましょう。
3-1. 段差があるため、つまずきのリスクがある
小上がりスペースの最大の特徴である段差は、逆にデメリットになることもあります。小さな子どもやお年寄りがいる家庭では、つまずいたり、転んだりするリスクがあるため注意が必要です。そのため、安全性を考えて段差を低めにしたり、角になる部分にRをつけたりする工夫が求められます。
3-2. 掃除やお手入れがやや手間
段差があるぶん、掃除機をかけるときに持ち上げる必要があったり、畳のメンテナンスが必要になったりと、フラットな床よりも少しだけ手間がかかることもあります。ただし、最近ではお掃除ロボットに対応した設計にするなどの対策も可能です。
3-3. 家全体の設計に影響する
小上がりスペースをつくると、床の高さや天井との距離、ほかの部屋とのバランスなどにも影響が出ます。特に平屋住宅では、限られた床面積の中で配置を工夫する必要があります。設計段階でしっかりと相談し、他の空間とのバランスを取ることが大切です。
4.小上がりスペースの魅力とは?
小上がりスペースの魅力は、やはり独特の「心地よさ」にあると感じます。ほんの少し高くなっただけなのに、そこに座ると、なんだかほっとする場所になります。子どもたちが集まって遊んでいたり、ペットが気持ちよさそうに寝ていたりと、そんな光景が自然と浮かんできます。また、限られたスペースの中で「特別な場所」をつくれるのも、小上がりの魅力。リビングの中にありながら、まるで別の部屋のような感覚が味わえるでしょう。階段下などの小さなスペースでも、小上がりを作れば小さなお子様がいるご家族ではとても便利です。おもちゃが散らかってしまうのを防ぐことができ、
腰をかけて見守ったりすることもできます。更に「ちょっとした舞台」のように感じる方もいるかもしれません。家族の団らん、友人とのおしゃべり、一人の読書タイム、お昼寝スペースなどなど、どんなシーンにも柔軟にフィットする空間になるでしょう。
まとめ
注文住宅は、「自分たちにとって心地よい暮らしとは何か?」を考えるところから始まります。小上がりスペースは、その答えの一つになり得る、柔軟で魅力的なアイデアです。床にちょっとした段差をつけるだけで、暮らしの質がぐんと上がるかもしれません。そんな小さな工夫の積み重ねが注文住宅の楽しさの一部なのです。ご自身やご家族のライフスタイルに合った家づくりのヒントになれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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